2009/12/7/(Monday)

レイソルを支えた漢

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「オカさん、駐車場の場所どこにします?」

雄太と10年ぶりの会話がこれやった。
半分近くの選手が入れ替わり、新加入した選手と残留した選手とのコミニケーションがまだ取れていないシーズンの始動日。
主力がさまざまな理由でレイソルを離れていったなか雄太とシュウシャ(平山智規)ぐらいしかベテランの生え抜きがいなかった。
口下手で人見知りをする雄太が自分からキャプテンを志願した。
残留した選手達はみんな若く、新加入してきたのは雄太より年上が多く自然とグループ分れが出来て、そのなかをまとめていくのはほんまに大変やったやろう。
キャンプで3週間の長い期間を共にしてチームが徐々にまとまっていくなか、決定的に打ち解けたのはシーズン開幕1週間前に開かれた食事会やった。
場が一段落した後、いまでは恒例になっている若手選手達の一発芸をやった。
嫌がる新人を含めた若手を無理やり即席で作ったステージみたいな所に追い込んだ。
モンゴル(長谷川悠)が場の空気を温めた後、谷澤とキリ(桐畑)が場の空気を冷やしてしまったからか次が出てこない。
しょうがないから、先輩の権力で大河原と柳沢の新人コンビを指名した。
何もないですよと出来ないばかり言ってる二人に「あのモノマネやったら鉄板やから、雄太のモノマネやっちゃって。」

巌が二人を炊き付ける。
「マジやばいっすよ、シャレになんないすもん」
「大丈夫、俺らも毎日、雄太の前脚を喰らっているから」
「イワオさん達は先輩やからいいっすけど、俺達やったらマジしばかれますから」
「大丈夫、俺達が笑ってごまかすから。そしたら、お前らめっちゃ金もらえるで」

俺の経験から言ってイワオの大丈夫ほど大丈夫やった試しがなかったけど、俺も「大爆笑まちがいないで」と相槌した。
一発芸を見て笑ったやつは1000円を払うというダウンタウンのガキ使のまねをしていた。
強引にステージに連れて行かれて真っ青になってる新人二人がか細い声で言った。
「南さんのマネをします。+*{‘**+{*??>*{}**」ある動物の鳴きまねをした。
何のモノマネかを書きたいけどマジで雄太に右の前脚で蹴られるから、ちゃうわ、右手のゲンコツを喰らうから書かんとく。なんとなく察して。
ドッカーンと笑いの爆笑の渦のなか雄太だけが憮然としていた。
おもむろに立ち上がってステージに向かう。一瞬、戦慄が走る。新人二人はこの世の終わりの顔をしていた。
雄太が前脚を、ちゃうわ、右手を振り上げてゲンコツを喰らわした。

「痛い、痛い、痛い。なんで俺なんですか、俺なんもやってないじゃないですか、やったのあの二人ですよ。」

顎を突き出して笑っていた谷澤が涙目で訴えた。

「あの二人はどうせイワオさんやオカさんにやらされてるから許すけど、お前が笑ってるのは腹が立つ。」

雄太と谷澤は静学の直属の先輩後輩の関係にあたり、谷澤は雄太をほんまに恐れていた。

「南さん、俺だけじゃないっすよ同じ後輩のパンゾー(小林祐三)も笑っていましたよ」

パンゾーと谷澤は静学の直属の先輩後輩の関係で一学年しか違わない。パンゾーは谷澤が先輩であることをほんまに隠したがっていた。

「あーもう今まで本当に色々な事を我慢してきましたけど、谷澤さん堪忍袋の緒が切れました。許さないですよ」

雄太が前脚を、ちゃうわ、右手を振り上げてゲンコツを喰らわした。

「痛い、痛い、痛い。なんでまた俺なんですか。ほんまにパンゾー笑ってましたって。俺ばっかりじゃなく、たまにはパンゾーにも喰らわしてくださいよ。」

顎を突き出して泣いていた谷澤が訴えた。

「祐三は嘘をつかない。谷澤、お前の言うことはこれっぽっちも信用していない。」

そのやり取りを見ていてほんまに腹がちぎれるんちゃうくらい笑った。そこらじゅうで腹がイタイと笑い転げていた。
新人二人がみんなから1000円をもらい結構なお小遣いになっていたけど、雄太とパンゾーだけは1000円を払わなかったのは言うまでもない。

みんなで笑いを共有してチームがほんまに一つになった瞬間やった。
レッツゴー柏はこの雰囲気のなか切り出して、みんなで振り付けの練習をして生まれた。
その後も一発芸の機会がある度に困った時の雄太頼みと「南さん、すみません。」とモノマネをしてみんなで新喜劇ばりに笑い転げるのに、雄太とパンゾーは憮然としていて、谷澤は必死に笑いを堪えてるのであった。

「痛い、痛い、痛い。今回ほんまに笑ってないっすよ。」
「うるさい、おまえは笑ってるのも腹が立つけど必死に堪えてるのも腹が立つ。」

バラバラの寄せ集めの集団を一つにするために、けっしていじられキャラじゃない雄太がキャプテンとしてみんながまとまるように気を使っていた。
全部自分がJ2に落としてしまった責任から雄太は背負いこんだんやで。シュウシャもそう。
出て行く選手に文句も言わず、J1からの条件の良いオファーも断って、ダウン提示を受け入れて、レイソルを背負うために残ったんやで。
あの頃のレイソルがどんな状況やったか、知らん人はいないやろうし、主力が大量に流出したことから分かるようにレイソルというチームが崩壊しかけたのを雄太とシュウシャが泥水をすすりながら再生させたんやん。
俺とかイワオはレイソルの為にしたんじゃない。石さんを男にしたいと。個人の想いでしていたこと。
だけど、雄太やシュウシャはレイソルを、自分達が育った故郷を護る為に共に落ちるとこまで一緒に落ちて、這い上がった人達やん。

俺の個人の想い。

雄太を契約満了。ふざけるな。
今年、レイソルがJ2に落ちたのはなんでや。高橋前監督は責任を取る形でシーズン途中でチームを去った。
その監督人事をしたのは誰?
もう1段ステップアップしたいといって、石さんを契約半ばで解除してまで推し進めた人達は誰?
チームを強化している人達の責任は誰にあるんですか?サポーターみんなに誰の責任かを明確にしてください。
その問題すら明確になっていないなか雄太をクビにするのは納得できない。
J2の第2GKとしては高い年棒だったから?
その年棒にいくまでに雄太はレイソルでどれほどサッカー人生をレイソルと共に築いてきたのか。
他のチームからより良い条件を求めて来たんじゃなく、他のいい条件も断ってダウン提示を受けても残ってきたうえでの金額でしょう。
大幅なダウン提示でもしてそれでも残るか出て行くかを決めさすぐらいあってもいいんじゃないですか。
それを一方的に何の前触れもなく、期限ぎりぎりで通告するのは情が無さ過ぎます。
一部のフロントの人達にはレイソル家族、一心同体という言葉は使って欲しくないです。
プロとしてやっている限り契約から逃れられないのは重々分かっている。
だからこそ、フロントの人達もプロとして責任を問われてしかるべき。
俺は柏レイソルをほんまのダチやと思ってる。
だから、レイソルの事を心から想ってない人達にレイソルを託したくない。

レイソルサポーターへ

俺が怒りに任せて勢いで書いたんじゃないことだけは信じてください。
あの1月1日から始まったこの1年、レイソルを見てきました。そして、J1残留を願っていました。
J2から這い上がったことが無駄になるんじゃないかと心配もしていました。だけど、降格してしまったけど、みんなが最後の最後まで選手を信じ、怒りに流されることなく、苦しさもつらさも共に共有している姿は絶対に選手に届いているから、1年で戻ろうを合言葉に選手みんなが残ってくれると思います。
みんなは前回の降格のとき自分達の行為の反省からスタートさせましたね。それが2006年の昇格に繋がりました。
今回はみんなが反省をすることはありません。逆に正しい方向に導いていく立場だと思います。
もしかしたら、これでレイソルとの関係は切られてしまうかもしれないけど、みんなの心に俺の想いは残ると思って書きました。

みんなにレイソルを託します。 

陽はまた昇る。そう信じてます。

岡山一成

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